庭作りで大切なのは「見えない部分」、つまり根っこです。私たちは、人にもやさしい土壌作りにこだわることで、ローメンテナンスで病害虫に強い樹木や長く咲く草花の生育を目指しています。
真砂土をたっぷりと、しっかりと混入することで、草花に適した土壌環境を創出。改良したやわらかい土壌は草花の繊細な根の生育を促します。真砂土はいつまでも容易に手でほぐせるほどの、自慢のやわらかい土です。
大型団地などは造成時、小高い丘を削って堤を埋めると、もとの姿が想像できないほど風景が一変します。大型のブルドーザーが縦横に疾走し、強固な地盤を作ります。やがて家が建ち、私たちはそのなかのあるお宅に仕事に伺ってみると、表面10センチ足らずのきれいな真砂土の下は、もうガチガチ……。
そこになにがしの木と下草類を植えます。高さ3メートルの木であれば根っこは60~70センチの球体ですから、普通はそれが収まるくらいの植え穴を掘ります。
バックホーが使えないときは手作業。スコップでは歯が立たず、ツルハシや削岩機を使うことも多く、非常に骨が折れる作業です。建築物には最適な地盤も、こと植物のためには過酷で厳しい環境でしかありません。さらに宅地の場合は「水はけ」も大事。降った雨をすばやく流してやらないと、建物や植物に悪影響が及びます。水勾配をきちんととって、それでも改善が難しい場合は暗キョを施すなどして滞水させないことが重要です。
また、高木を植栽する場合は根鉢の倍以上、庭を作るときは樹木と草花が植える面積のすべてを深くほぐします。数トンの重機が締め固めた地盤をほぐすのは、手間と労力がかかる大変な作業です。そこに有機肥料とパーライトやその他の土壌改良剤、完熟堆肥をたっぷりとすき込みます。まとまった量を入れなければ土壌は決してよくなりません。
完成後の庭を見ても、表面上は何をしたのか分かりません。ですが、私たちは手間暇かけて土作りにこだわっています。それは、土作りの成果が2~3年後の草花の生育に如実に現れるからです。
これまで育った圃場の樹木を、根を切って新しい場所に植えつける。1年目はほとんど養分を吸収せず葉色もやや色褪せ気味です。しかし2年目以降、こま根がびっしり出ます。それからが土壌改良の実力発揮です。
重機で締め固めた土壌では、いくら樹木とはいえ根を四方に伸ばすのは至難の業。さらに有機物のない土は根の出方が荒く、長雨が続けば根ぐされし、干ばつが続けば水分不足を起こします。
また乏しい根茎では、上部を支えきれず枝枯れしたり、枯死したり……。枯れないまでも、雑木本来のやさしい枝ぶりやさわやかな風情が失われてしまいます。一方、土作りをしっかり行うと通気性・保水性が向上し、有用な土壌菌が繁殖し根がすくすくと伸びるように。また、こま根が多く、土の水分や養分を吸収しやすくなります。元気な根っこの植物は病害虫に強く、発生しても被害がそれほど拡大しないのです。
人間の免疫力に病気をはねつける力があるとすれば、それは植物でも同じ。そして植物の免疫力は、土壌によって大きく左右されます。
なぜここまで土作りにこだわるのか?それは最初が肝心だから。深く耕したり、堆肥を投入したりするのは、作ってしまってからではなかなか難しい面があるのです。
私たちが作る「雑木と野の花の庭」には、ヤマアジサイやワレモコウ、セージ類から葉物まで多くの野の花や下草を使います。
可憐な花が毎年長く咲き続け、四季を美しく演出してくれるのも、元気な根っこが育つ環境があり健康な生育をしているから。また下草類が元気だと雑草がはびこるスペースがありません。さらに豊かな土であれば、仮に雑草が生えてきても簡単に抜けるというメリットもあります。